西穂高岳

自ら考える

GWが10連休だった方々には、お休みモードからのリハビリ気味の現場復帰の頃かもしれません。しかしそれとは反対に、世の多くの人々が休みになると忙しくなる仕事というのもあります。そのような方々は長いGWが終わって、ほっと一息つかれているところかもしれません。ともあれ、新しい元号『令和』元年が始まり、生徒たちも普段の楽しい学校生活に戻っている頃でしょう。新しい時代の始まりに、何か新しいことに挑戦しようという人もいらっしゃるでしょう。特に新しいことでなくても、何かを改めたいと考えている人には、一念発起して自分を変える好機かもしれません。何事も一歩踏み出すところから始まります。

さて、今回のGWが10連休となった影響で、中間考査をしない中学校・高校があります。テストで作問するだけの分量を学習できないからとのこと。単純にテストが減ることを喜んでいる生徒もいますが、それだけ期末考査の試験範囲が広がるわけですから、かえって厳しいお話です。学校の先生方にとっても、評価機会を失うことになりますから、中間考査をしない代わりに小テストなどで評価材料を補ったり、1学期と2学期の授業日数の配分を調整することで、出題範囲と試験日程のバランスをとるなどの対応をするようです。

学校によってさまざまな形になりそうですが、いずれにしても1学期の定期考査というのはどの学年にとっても重要なものになります。特に1年生(中学校・高校ともに)にとっては、初めての定期考査でどのような準備をするかが、今後3年間の成績を左右するものになるといっても過言ではありません。

まず中学1年生にとっては、5~9教科まとめてのテストというのは初めてのことです。どのように準備すれば良いのかわからず、不安で一杯でしょう。小学校では普段の学習がよく理解できていれば、おおむね満点に近い得点が普通だったかもしれません。しかし、今度はなかなか同じようにはいきません。現在進行中の教育改革の方向性から、記述問題が多く、論理的に考えて答えなければならない問題が多くなっているからです。いわゆる暗記教科といわれる理科や社会にしても、覚えなければならないことも増えますが、それ以上に、「なぜそうなるのか」を理解することが大きなポイントになります。塾生たちにとっては、積み重ねの教科である数学・英語については、塾で少し先取りしながら進め演習も十分やっていきますので、普段の学習を充実していれば試験前に慌てる必要はありません。しかし、その他の教科については、個人個人の学習の仕方が大きく左右します。暗記だけに走らず、まず基本から理屈や仕組みをよく理解していくことが肝要です。連休明け辺りからは、部活動もだんだん本格的になってくると、上級生との体格差から体力的にしんどい局面も出てきます。そんな時は自分の身体とも相談しながら、上手く乗り越えて欲しいところです。

そして高校1年生にとっても、中学時代とのギャップへの対応が重要です。高校入学後に生徒たちが口をそろえて言うのは、「学習内容が難しい」、「学習進度が速い」、「不親切である」ということです。学習内容が難しくなるのは当然のことですが、分量も増えることで必然的に進度が速まり、消化不良を起こしやすくなってしまいます。中学で副教材などを使いながらじっくりやっていたのとは、ペースがまるで違うことに気づきます。入学後に研修会などで「高校での学習の進め方」について学んだように、予習の重要性が高まります。自分が予め考えを持っている内容を説明される場合、「自分の考えていた通りだ」、「この部分の自分の考え方は間違っていた」、「ここは、あんなふうに考えるのか」などと、自分の考えを反復しながら 理解していくことができます。授業中の思考が活性化され、学習効率が高まります。一方、予習しないままに授業に臨むと、「ふ~ん、そうなのか」くらいの感じで、板書を機械的に写すだけで、肝心の考え方などは頭の中を素通りです。理解せずに写しただけのことは、試験前に見返しても、「こんなこと勉強したっけ?」くらいが関の山! 学習内容が難しくなればなるほど、理解することが困難になるというのは当然のことですが、理解したことを定着させ、類題や応用問題が解けるまでの実力をつけるには、さらに十分な演習も必要になります。

そう考えていくと、学習の基本というのは、やはり「自分で考えて理解すること」であるということにあらためて気づかされます。人から説明されて何となくわかったような気になっていたことが、実はよくわかっていなかったというのはよくある話です。何事も受け身の姿勢より、自ら能動的に取り組む方が得られるものが大きくなるというのは世の常です。学年を問わず、攻めの学習姿勢を身に付けていくことが大切です。

自分が子どもであった頃を振り返ってみると、時が経つ速度がとてもゆっくりでした。世の中わからないことだらけで、自信などあるはずもなく、手探りのことばかり。毎日のように新しいことに出会っては驚き、いつも心をどきどきさせながら、新しい世界を探検しているような日々だった気がします。そんな多感な時期の子どもたちにとっては、毎日が試行錯誤の連続なのかもしれません。そんな試行錯誤の中で自ら感じ、自ら工夫し、自ら獲得したことは、本当の意味で人間力を高めるものになるのではないでしょうか。

高山提灯