2018年度公立高校入試に向けて

2017年度公立高校入試は、全国的に見て「思考力・判断力・表現力」を問う問題が全教科において一段と増えているようです。これまでのように、単に用語や知識の量をはかるという問題ではなく、習得した知識をいかに使えるかを問う問題づくりになってきています。2020年からの大学入試改革にともなう全面的な教育改革が進みつつあります。

そしてそのような全国的な流れの中でも、広島県の問題は最先端を走っているようです。47都道府県の公立高校入試の各教科別平均点の得点率ワースト5を見れば明らかです。求められている力がまだまだついていないということでもありますが、教育改革の方向性が明確に現れた問題だといえるでしょう。

2017年度公立高校入試 教科別得点率ワースト5

国語

1位高知県(54.2) 2位広島県(47.8) 3位福島県(49.4) 4位愛媛県(51.6) 滋賀県(52.3)

数学

1位高知県(35.8) 2位長野県(43.0) 3位奈良県(43.8) 4位埼玉県(44.4) 5位山口県(44.6)

社会

1位広島県(38.6) 2位島根県(45.0) 3位石川県(47.8) 4位高知県(50.2) 5位静岡県(50.8)

理科

1位広島県(34.2) 2位静岡県(35.2) 3位滋賀県(38.3) 4位高知県(39.8) 5位島根県(41.6)

英語

1位広島県(31.8) 2位島根県(40.6) 3位滋賀県(43.7) 4位山梨県(45.0) 5位山口県(45.4)

(Educational Network Journalより 数値は得点率)

学校教育法30条第2項には、「生涯にわたり学習する基盤が培われるよう、基礎的な知識及び技能を習得させるとともに、これらを活用して課題を解決するために必要な思考力、判断力、表現力その他の能力をはぐくみ、主体的に学習に取り組む態度を養うこと」が掲げられていますが、この「知識・技能」、「思考力・判断力・表現力」、「主体性・多様性・協働性」という学力の3要素のうち、基本的な「知識・技能」を問うだけでなく、「思考力・判断力・表現力」を問う問題が増加するとともに、「主体性・多様性・協働性」の要素をふまえた問題づくりが急増しているために、問題全体が年々難化しているのだと考えられます。

具体的には、まず記述問題の割合がとても高いことがあげられます。たとえば社会科についてみると、全国的には多いところでもせいぜい50%程度ですが、広島県では84%が記述問題です。記述問題を敬遠していては得点できません。長い設問文を読んだ上で、資料の読み取りから分かることや根拠を記述させることが多いわけですが、題意をとらえ基礎的な知識をもとに論理的に書ければ、けっして難問ばかりではありません。では受験生が何から取りかかるべきかといえば、やはり基本的な知識をしっかりつけることです。暗記教科だからといって丸覚えというのでは役に立ちません。急がば回れ!教科書をよく読んで理解することが有効です。

「なぜ、そうなるのか」が分からなければ自分の言葉で表現して答えることはできません。基礎的な仕組みや流れを理解しながら、記述のトレーニングをしなければなりません。部分点もあるわけですから、とにかく練習あるのみです。

また「主体性・多様性・協働性」についても、ふんだんに盛り込まれた内容になっています。これまで学校の普段の授業で度々体験してきたアクティブ・ラーニングの要素です。問題の中では、複数の生徒の話し合う場面が想定されます。その登場人物の考えの根拠を述べさせたり、自分の考えを述べさせたりします。他者の考えを認識し、自分の考えとの違いを理解した上で、論理的に表現して答えなければなりません。普段何気なく体験していることでもありますが、文字で書いてあることを読んで理解するのと同じように、授業で先生や他の生徒が話す内容や考えをよく聞いて理解しながら、自分の考えを深化させるというプロセスが大切です。そのような学びの要素を意図した日頃の授業を大切にしなければならないというのはいうまでもありません。

中3生の皆さんは、先月末に社会科用語暗記会に参加し、地理・歴史の基礎固めに丸一日缶詰めになって取り組んでくれました。勉強はやればやるほど気づきがあるもので、「ここも足りない、あそこも足りない」という気持ちになるものです。だからといって気持ちばかり焦って何も手につかなくなるというのではなく、自分のやるべきことを日々地道に進めることが肝要です。 “Little and often fills the purse!”

三良坂薔薇