真っ赤なピーマン(縦)

失敗を楽しむ

「間違えてもいいんだから、自分の答えを言ってごらん」そんな言葉を生徒にかけることがあります。多くの子どもたちにとって、他の人の前で言った答えが間違いだったり、失敗したりすることは、恥ずかしいことであり、心に負荷のかかる出来事になるものです。できるならばみんなの前でかっこ悪い姿は見せたくないという感情がはたらくのは当然のことでしょう。しかしそんな生徒たちの心理の一方で、教える側の私たちは間違えることを前提にたずねています。いえいえ、実は間違えてくれることを期待している場合も少なくありません。なぜなら、間違いの中に学びがあるからです。

子育てではよく成功体験をたくさん積んでいくことの重要性が語られますが、この成功体験こそが失敗を自分の糧にする原動力となっていきます。何かに取り組もうとするとき、「どうせできない」「これは苦手だから」などとネガティブな姿勢では、新しい世界に一歩踏み出すことはできません。「成功することしかやってはいけない」などというルールは、どこにもないのですから。

成功体験を多く積んでいくと、自己肯定感が高くなります。自己肯定感が高い子どもは、新しいことにも「とりあえずやってみよう」という姿勢で、結果をあまり気にせずに挑戦することができます。また、取り組んでいる途中で困難に出会っても、「何とか工夫すればできるかもしれない」というふうに投げ出すことなく、最後までやり抜くことができます。

「少々失敗してもやってみよう」と積極的な姿勢が身につくか、「失敗するのは嫌だからやめておこう」と何事にも消極的な姿勢が常になるかは、成長過程における環境が大きく左右してしまうようです。「早く~しなさい」「なんでできないの」「~したらダメよ」などという否定的な声掛けが多いと、失敗を隠すようになり、できそうにないことにはチャレンジしなくなります。人間が間違えるのは当然、失敗するのは当たり前のことです。

だから、失敗と上手く付き合うことが大切になります。ところが、失敗というのは、前述のように心に負荷のかかるものですから、その失敗から顔を背けてしまいがちになります。そうなるとそこから何かを学んだり、次の同じような局面に出会ったときどうすれば良いのかを考えるチャンスになりません。そのような子どもはその後も同じような失敗を繰り返してしまうことになるのです。そして失敗が自分にとってマイナスの出来事としてしか残らないとすれば、様々なことに挑戦する意欲は、どんどん失われていくでしょう。

生涯におよそ1,300もの発明と技術革新を行い、「世界の発明王」といわれるトーマス・エジソンは、「私は失敗したことがない。ただ、1万通りの、上手く行かない方法を見つけただけだ。」「失敗すればするほど、我々は成功に近付いている」などと言ったそうですが、世の偉人と呼ばれる人々は異口同音に、失敗が無ければ自分の成功は無かったと言います。

ではどうすればこのように失敗と上手く付き合えるようになるのでしょうか。それには、やはり周囲の支えが不可欠です。子どもが失敗したとき、親は励ましたり、成功した部分をほめたりできます。また、自分の失敗談から誰でも失敗すること、そして失敗から学ぶことがたくさんあることを伝えることができます。失敗を怒り、失敗を問い詰めるのではなく、子どもの興味や好奇心にプラスになるようなものが提供できれば、さらに立ち直りを促すことができます。

まずは小さな失敗と多く向き合うことが大切です。そして失敗をリカバーするプロセスをたくさん経験することが望まれます。願わくば、失敗を楽しめるくらいの図太さを身につけられればと思います。

昨年度、全国の小中学校で30日以上欠席した不登校の児童生徒は24万人を超え、過去最多となりました。実に小学生の77人に1人、中学生の20人に1人が不登校である状況です。不登校には様々な要因が考えられますが、自分の失敗や遅れと上手く付き合えないことも一つの要因として考えられます。過去となった失敗や遅れを悔やむより、未来に視点を移して、これからの自分に期待を持てるような気質を育むことができれば、失敗を成功へのエネルギーにする人間になれるにちがいありません。

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