クリサンセマム勉強は楽しい!

あちらこちらで桜の花がほころび、街の空気はいつの間にかすっかりと春めいてきました。生徒たちも期待に胸をふくらませて新しい学年を迎えようとしています。いまだ新型コロナウィルスの感染懸念から解放されてはいませんが、それだけに新学期に期待するものも大きいといえます。特に今春進学される皆さんは、未知のステージでの学校生活に期待と不安の入り混じった気持ちかもしれません。まずは学習面でスタートダッシュを遂げ、上手に新しい学校生活を軌道に乗せてほしいところです。

さて、「生徒たちの学習を支える」という私たちの仕事における永遠のテーマは、生徒たちに自律した学習習慣をつけさせることです。そのためにはどんなことが必要なのでしょうか。毎年のように、受験シーズンを 迎える度に「この子は変わったなぁ!」と感じさせてくれる生徒が何人も出てきます。もちろん、良い意味での変貌ぶりです。「もっと勉強にも興味をもってくれないかな」と思わせていたような生徒が、自分で意欲的に勉強するようになるのです。気持ちを変えてくれるような大きな出来事に出会ったのかもしれませんが、大方は些細なことがきっかけになっているように思われます。そのきっかけとなる精神的な刺激というのは、友人や家族だったり、学校や塾の先生だったり、テレビ・ラジオ・新聞や本などのメディアだったり…と、生徒たちを取り巻くあらゆるものが考えられます。しかしながら、そのメンタル面でのきっかけが実際の行動につながり、習慣が変わっていかなければ、本当の意味で変わったとはいえません。そのプロセスで一番重要なのはやはり自分しかありません。

勉強を楽しいものにするための第一歩は、自分で積極的に取り組んでみることです。何事もだれかに強制されたり、言われて行動したりするというのは、あまり楽しいことではありません。ましてや、思春期ともなると肉親から言われることに、いちいちカチンとくることが多く、素直に聞き入れられないものです。一方、自ら考えて行動するというのは、責任の所在は自分にあるわけですから、その結果を受け入れながら、やり方を改善しながら前に進む作業になります。試行錯誤しながら成果を出していくというのは、楽しい営みです。

親から見て「この子はやる気がないな」と思われることもあるかもしれませんが、勉強に取り組もうという気持ちが無い子などいません。頑張りたいという気持ちがあるのに、それを阻む要因が少なからず存在しているために一歩目が踏み出せない場合もあるでしょう。SNS、YouTube、ゲーム、マンガ、テレビ、…etc. まずはそのようなものを遠ざける必要があるかもしれません。スマホを一日中手放さないような状況では、勉強などできるはずはありません。また勉強する場所についても、静かに一人で部屋にこもらなければ集中できないタイプの人もいれば、周りに人がいるリビングのような所の方がはかどる人もいるかもしれません。自分に合った環境づくりも重要です。

そして「勉強が難しい、わからない」としきりに言う生徒たちに共通していることがあります。基本が理解できていないのに、いきなり難易度の高い問題に取り組んでいるのです。何事も物事には順番があるわけですが、基礎基本から一歩ずつ積み上げていかなければ、応用問題を解くことはできません。また暗記科目といわれる教科も、丸覚えでは学力として身につきません。基本的な知識を獲得するところから、日々の生活の中でも興味が生まれるようになるものです。知識と興味は連鎖しながら広がりを持っていきます。日頃何気なく見聞きするニュースも、自分が知っていることに関連することがあれば、俄然興味を引くものになります。

孔子は論語の中で『子日、知之不如好之者、好之者不如楽之者』(子曰く、これを好む者はこれを楽しむ者に如かず)と言いました。これは「あることを理解している人は知識があるけれど、そのことを好きな人にはかなわない。さらに、あることを好きな人は、それを楽しんでいる人に及ばないものである」という意味です。日本語にも『好きこそものの上手なれ』という言葉がありますが、やはり仕事でも趣味でも、それを楽しみに感じている人が一番だというわけです。勉強には得意だと感じるものも不得意なものもあるでしょう。すべての教科をその域に達するまで究めて楽しむというのは、至難の業かもしれませんが、まずは自分の得意とする教科から、楽しみを広げていくことをお勧めします。

とはいえ、実際のところそんなに甘いものではないのかもしれません。しかし、突き詰めて考え抜いたり、わかるまでやり抜くことで、一定の成果が出てくるようになります。わからなかったことがわかるようになるというのは、純粋に楽しいことです。その気持ちがまた勉強に向かうモチベーションになっていきます。そして、もやがかかったようにぼんやりしてことがはっきりとわかるようになると、見える景色が一変していきます。新しい世界が見えてくることで、新たな探究心が湧いてくるものです。それは勉強だけではなく、どんなことに取り組む場合でも言えることでしょう。失敗してもやり直せますし、周りの人の助言や力を借りながら修正していけば良いのです。そんな自分の世界を拡げるプロセスを日々体験して欲しいと願っています。

小さなピンクの花