さつまいも

自律性を育むために

若い頃、「指示待ち人間になるな!」とよく言われたものです。社会人になると、指示がなくても今必要なことは何かを考え、自ら能動的に動き、問題提起や解決の糸口を見つけ出すことが求められます。そのような自律性のある社員を育成することは、社員を抱える企業にとっても大きな課題です。しかしながら、そのような自律性というのは、社会人になって一朝一夕に備わるようなものではありません。

子どもの教育が目指す最終的な目標は、子どもがときには周りの力を借りながら、自分の足で人生を歩んでいける「生きる力」を身につけていくことです。その一方で少子化の影響などもあり、今の親の子どもへの関与の度合いは高くなっています。日本の親は過干渉とまで言われることがあるほどです。子ども自らが選択したり判断したりするチャンスを、知らず知らずのうちに親が奪っているようなことがあるものです。親が教育熱心であればあるほど、完璧を求めてしまう傾向があります。そうなると子どもに任せてじっくり考えさせることができず、自分がやってしまった方が早いと、親がやってしまうなんていうこともあるわけです。それでは子育てにはならず、本末転倒です。もちろん段階がありますから、年齢に応じてだんだんと自分で考えて判断して行動できるように、親の手を徐々にはなしていくことになります。子どもの成長が進むと、もし親が決定したことをやってみて思うような結果にいたらない場合、子どもは責任転嫁するようになってしまいます。これでは責任感のある人間は育ちません。

これからの時代はAIの時代だと言われます。さまざまなことがAIによって動かされる世の中では、単純なパターン認識で判断されるような仕事は、すべてAIに奪われてしまうでしょう。しかし、AIが万能であるわけではありません。「答えのない問題」には、自ら行動して課題解決のできる人材が必要です。たとえば、新しいことを始めるには、リスクが付きものです。仕事ができる人は、リスクとリターンを計算して仕事を進めていきます。人は自分の責任で選択して失敗することで、リスクの取り方を学んでいくものだといわれます。逆に言えば、自分で選択して失敗したことがない人にはリスクの取り方がわからないということになります。

では、どのようにすれば自律性を育んでいけるのでしょうか。基本的には、どんなことも自分で考えさせることが一番です。今日はどの服を着るのか、何を食べたいか、というようなささいなことから自分で考える機会を意識的に与えることが大切です。なかなか答えが出ないようなことは、考える材料やヒントを与えながら気長に付き合うことも必要かもしれません。人は自分の体験の中で得た知識や知恵に照らし合わせながら思考し、判断し、行動決定をしています。しかしながら、子どもの持つ知見は大人ほど豊富ではありません。自分で考えようとしても、それを判断するための経験や知識が十分でなければ、考える術はありません。そこで親の役割として重要になるのが、日頃から子どもに様々なことを経験させたりチャレンジさせる機会を作ることです。考えるための根拠となるものが豊かであるほど、正しく決断したり、自信を持って行動したりすることができるというのはいうまでもないことでしょう。

そして最も大切なのは、子どもの話をしっかりと聞くことです。どうしたいのかをわかってもらっていれば、安心感を持って自分の考えるように行動できるようになります。子どもは成功して自信をつけ、失敗して学びます。親はじっと見守ることです。すぐに正解を求めるのではなく、自分で自由に発想したり、自分に合ったやり方を工夫したり、考えることを楽しむ人になって欲しいものです。

りんごとみかん