ノウゼンカズラ たて

大学入学共通テスト

大学入試の在り方を議論している文部科学省の有識者会議は、2025年の大学入学共通テストにおける、英語民間試験の活用と記述式問題の導入について「実現は困難」とする提言案を示しました。文部科学省は、この夏にも導入の断念を正式に決定する見込みです。

今年度から始まった大学入学共通テストでは当初、入試改革の柱として、英語の民間試験の活用と、国語と数学の記述式問題が導入される予定でしたが、地域格差や経済格差の懸念など制度の不備への指摘から導入が見送られました。その後も新しい学習要領で学ぶ現中学3年生が受験する2025年以降の大学入試の在り方について検討してきました。その中で、英語の「読む」「書く」「聞く」「話す」の総合的な力の評価に英語民間試験を活用することについては、試験ごとに会場数や受検料、障害のある受験生への配慮、地理的、経済的事情などによる格差への対応が不十分な点などがあらためて指摘され、またコロナ禍で中止も相次いだ外部の試験に依存することへの課題も浮上してきたとのことです。

このテストの条件である公平性を保つことの難しさから、英語民間試験の導入は見送られる公算ですが、「大学入試が変わらなければ、日本の教育は変わらない」という教育改革の方向性に変わりはありません。今年スタートした共通テストでは様々な改革が各教科に盛り込まれました。

出題形式の変化が大きかったのは英語です。「筆記」「リスニング」が、「リーディング」「リスニング」となり、「リーディング」の問題文はすべて英文に変わりました。また、「リスニング」では、これまで問題の英文が2度読み上げられていましたが、1度しか読まれない問題もありました。配点についても、これまでのセンター試験で、「筆記」:「リスニング」=8:2だったものが、共通テストでは「リーディング」:「リスニング」=1:1と、「リスニング」の割合が大きくアップしました。内容においても、「リーディング」の大問6題が全て読解問題となったことで、読解量が増え、多面的な情報処理能力が求められました。

数学では、問題文の量が格段に増えました。数学Ⅰ・A以外は試験時間が変わらないために、読む能力、情報処理能力の高速化が求められています。

また地歴・公民では、多様な資料を読み取る問題、理科では身近な素材をテーマや実験に取り扱った出題が目立ちました。

センター試験が「どれだけ知識があるか、どれだけ理解しているか」を重視していたのに対し、共通テストは「知識をいかに活用するか」を問う試験へと大きく変貌したといえます。

タチアオイ

新しい中学校教科書

一連の教育改革が進む中、新しい学習指導要領にしたがって昨年度の小学校の教科書に続き、今年度は中学校の教科書が一新しました。

英語は、小学校5年生から教科化されていたことから、中学1年生では従来の導入単元の色合いは薄れています。ただ、小学校までに「書かせる英語」はほとんどやっていないだけに、ヘボン式ローマ字や英単語の覚え方を一からマスターすることは、相変わらず求められますし、「be動詞」の文と「一般動詞」の文を区別させることも後追いながら必要となります。高校から「仮定法」「現在完了進行形」「原形不定詞」などの単元が中学校に移行しました。福山市内では公立中学校での教科書へのアプローチが今年度より全面的に「ラウンド・システム」に変わりましたが、高校や大学入試など将来的に長文を読みこなして内容を把握したり、英語で発信する力を育むためには、中学までに学年相応の十分な語彙力をつけることや、文法をしっかり理解し定着させることが、一層重要になります。

数学では、これまで高校で学習していた「箱ひげ図」と「四分位範囲」が中学校に移行しました。複数の箱ひげ図から読み取れる内容を説明したり、データから読み取れることをもとに考えられることを説明するような問題が2022年度高校入試から出題される可能性もあります。

国語では、「情報の扱い方に関する事項」が新しく盛り込まれました。具体的には、文章の内容を図や表を使って整理したり、図表や情報を読み解き、それらと関連付けて文章を書いたりするような活動をします。このような要素は、近年の広島県公立高校入試の出題にすでに盛り込まれてきましたが、文章を読み取ることにおいても表現することにおいても、論理性を磨いていくことが一段と求められることになるでしょう。

社会では、AIやビッグデータなどのICT用語、SDGsなどの環境や国際問題に関する用語がたくさん追加されました。地理・歴史・公民ともに内容が詳しくなっており、統計や図表から読み取れることをしっかりと理解する習慣付けが必要です。

理科では「イオンへのなりやすさ(イオン化傾向)」や「ダニエル電池」が3年生の教科書に追加されました。これらは従来の教科書にも記載はありましたが、参考程度の扱い方でした。仕組みを十分に理解することが、高校の化学へのステップになります。

2020年度の小学校・2021年度の中学校教科書の改定は、来年度2022年度の高校教科書改訂に連動しています。これらの教育指導要領の改訂により、これまで以上に多面的・多角的に学習することが求められています。新しい時代に合わせた知識・技能の習得、活用、探究に対応するため、質・量ともに格段の充実が図られた教科書になったといえます。グローバルに活躍できる人材を育成するという目標に向けての教育改革は始まったばかりです。児童・生徒たちそれぞれが、今取り組んでいる学習を一歩ずつ着実に自分のものにしていくことが何よりも大切です。

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