ピンクのバラ

進化する学び

年度末から続く新型コロナウィルス流行は、感染者の減少に伴い、5月中に緊急事態宣言は全面的に解除されました。この間国内の累計感染者数は約1万7千人、死亡者数は約900人(5月31日現在)という大流行となりました。ただ、確認された感染者数は、1万人あたり1.32人であり、海外の米国50.75人、スペイン50.24人、英国39.92人、ロシア25.06人などに比べ圧倒的に低い日本での感染率は、世界から驚きをもって注目されています。さまざまな要因があげられているようですが、あらゆる場面で国民性が発揮された結果なのでしょう。しかしながら、行動自粛を緩めた途端に再び感染者が増加し始めたという報告もあり、まだまだ完全な収束とはいえず、今後も注意深く予防に努めることが求められています。

今回の流行は、社会全体に大きな爪跡を残しました。業界・業種によりその度合いは異なりますが、経済的に大きなダメージを受け、倒産、廃業に追い込まれたケースもあります。多くの人々が経済的損失を少なからず被ることになりました。そして教育界においても、大きなマイナスをもたらしました。長期にわたる学校の休業により、授業が滞っていることは、授業再開後もさまざまな課題を残します。塾ではオンライン授業などで学習機会をある程度確保できましたが、全生徒・全児童を預かる学校では、機動的に運営できない面が露呈しました。学校とすると夏休みなどを削るなどして、授業時間の確保を図ることも想定されます。そうなると子どもたちにとって一番のしわ寄せを感じるのは、行事や部活動ができないことでしょう。すでに部活動は完全に停止してきましたが、さらに活動の成果を披露する場である大会やコンテストの中止も発表されています。つい先日も、高校野球の夏の甲子園大会中止が決まり話題になりましたが、野球だけでなく、インターハイは全面的に中止、吹奏楽や合唱コンテストも中止ですから、最後の活躍の場として頑張ってきた生徒たちの胸の内を推し量ると、何ともやるせないものがあります。受験学年の生徒たちが、気持ちを切り替えて受験や進路実現へ向けて進み始めるために、気持ちの区切りをつけられるような場をつくってほしいものです。

このような未曾有の経験をしてみてあらためて感じるのは、現代人がさまざまな場所でいかに多くのの人々と触れ合うことを通じて暮らしているかということです。働くこと、学ぶこと、食べること、楽しむこと、一人で成り立つことなど何もありません。また、江戸時代の鎖国が終えてまだ160年余りが過ぎただけですが、これほどまでに多くの人やものや情報が海外と行き来することによって日常生活が支えてられているということにも今さらながら気付かされます。ウィルスのような悪いものが流入しないように、もう一度時代をさかのぼって鎖国し、国内だけで完結できるような生活を目指せるでしょうか? いえ、決してそんなことはできないでしょう。現代はすでに、国境線のないグローバル社会になっているわけです。これまで以上に危機管理が必要ですが、「島国根性」など捨て、協調してグローバルに生きなければなりません。

「202年度、子供の学びが進化します! 新しい学習指導要領、スタート!」

学習指導要領改訂スケジュール(政府広報オンラインより)

さて、スタートからつまずくような形となった新年度ですが、小学校では10年ぶりに改訂された新しい指導要領が全面実施になりました。グローバル化や人工知能などの技術革新が急速に進み、さまざまなことに予測困難な時代に、子どもたちが自ら課題を見つけ、自ら学び、考え、判断して行動し、より良い社会や人生を切り拓いていくための「生きる力」を育むためのものとしています。主な変更点は以下のようになります。

外国語教育

小学校3・4年で「外国語活動」、小学校5・6年で教科としての「外国語」が導入。高等学校卒業までに外国語でコミュニケーションできるようになることを目指し、「聞く」「読む」「話す」「書く」の力を総合的に育む。

プログラミング教育

小学校で「プログラミング教育」を必修化。コンピュータに意図した処理を行わせるための論理的な思考力「プログラミング的思考」などを育む。

道徳教育

「特別の教科 道徳」を新設。さまざまな課題に「自分ならどうするか」と向き合い、自分とは異なる意見をもつ他者と議論する授業などを通じて道徳性を育む。

これらの他に、言語能力の育成理数教育の充実伝統や文化に関する教育主権者教育消費者教育 等の強化項目を掲げています。形ばかりでなく、進化する学びへの充実した改革となることを願っています。

ピンクのユリ