私たちの未来
空を真っ黒に覆い、大地に生える緑という緑を食い荒らすバッタの大群! 新型コロナウィルス流行の陰で、バッタが東アフリカから南アジアにかけての広大な地域で異常発生していることが報じられています。このサバクトビバッタは自力で飛ぶ能力が高い上、風に乗って飛んでいく習性があるので、風向き次第で広範囲にわたって繁殖する可能性があるのだそうです。ケニアでは、新型コロナウィルス流行でバッタの防除活動が制限されたことも重なり、70年ぶりの大発生に拍車をかけているようです。国連食糧農業機関(FAO)では、モーリタニアからインドにいたる約30カ国で被害が出ると予測し、およそ4000万人以上の人々が飢餓に直面する危機的な状況にあると警告を出しました。
一方、ロシア・シベリア北部のベルホヤンスクは、冬に-67.8℃を記録したことのある極寒の土地です。そんな冷涼なところですが、6月下旬に気温が38.0℃まで上昇しました。この熱波の原因は、偏西風の蛇行によって、南からの暖気が断続的に流れ込んでいることにあるとのこと。年々進む地球温暖化ですが、シベリアなどの高緯度の値域では、地球全体の倍以上の速さで気温上昇が進行しているのだそうです。ロシアという国は、その国土の3分の2が永久凍土の上にありますが、この永久凍土の融解は深刻な事態を招いています。6月上旬にはノリリスクという町の火力発電所のオイルタンクに亀裂が入り、2万tもの軽油が流出し、周辺の川を汚染しています。この町では地盤崩壊によって約6割の建物が変形しているそうです。
永久凍土の融解によって心配されていることはまだあります。永久凍土の中で長年眠っていた病原菌が目覚めて、人々を苦しめる可能性があるというのです。過去に例があります。2016年にシベリアで2000頭ものトナカイが死に、その後人にも感染して死亡者を出しました。その原因は、70年前に炭疽菌に感染した動物の埋葬地の氷が解けたことにあるというのです。
これらの現象といい、今回の新型コロナウィルス流行といい、これまで人類が経験したことの無いような現象が多発している背景に、人類の活動があるのはいうまでもないことでしょう。さまざまな警鐘が鳴らされる中で起こる事象は、想定外のことばかりではなくなってきています。人類は何もせずに座して滅亡を待つわけにはいきません。
近年の入試問題に頻繁に取り上げられるようになったものに、「SDGs(エスディージーズ)」があります。この言葉は新聞やテレビなどでもよく聞かれるようになりましたが、日本ではまだあまり知られておらず、認知度は30%にも満たないそうです。
「SDGs(エスディージーズ)」とは、「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称であり、2015年9月に開かれた国連サミットの中で世界のリーダーによって決められた国際社会共通の目標です。2000年に国連サミットで採択された「MDGs(エムディージーズ/ミレニアム開発目標)」が2015年に達成期限を迎え、新たに2015年から2030年までの長期的な開発の指針として採択されました。その中身は、「17の目標」とそれに付随した「169のターゲット(具体目標)」で構成されています。
《SDGs 17の目標》
➀貧困をなくそう
➁飢餓をゼロに
➂すべての人に健康と福祉を
④質の高い教育をみんなに
⑤ジェンダー平等を実現しよう
⑥安全な水とトイレを世界中に
⑦エネルギーをみんなにそしてクリーンに
⑧働きがいも経済成長も
⑨産業と技術革新の基盤をつくろう
⑩人や国の不平等をなくそう
⑪ 住み続けられるまちづくりを
⑫つくる責任 つかう責任
⑬気候変動に具体的な対策を
⑭海の豊かさを守ろう
⑮陸の豊かさも守ろう
⑯平和と公正をすべての人に
⑰パートナーシップで目標を達成しよう
豊かな国、平和な国に暮らす人々には、気付きもしないようなことがらもあるかもしれません。しかし、世界にはさまざまな困難に直面し、苦しんでいる人々がたくさんいます。知らないからといって、目を背けて暮らしているのは、同じ地球に生きる人間として無責任なことです。今私たちにふりかかっていないようなことも、やがて身近なものとして迫ってきます。大きく視野を広げ、地球規模で私たちの未来を思考しなければならない時代です。