2020桜部活動

昨年末、広島県公立高等学校の令和5年度入学者選抜(現中学1年生が対象)からの選抜方法変更が決定されました。基本的な評価の比重は『学力検査』:『調査書』:『自己表現』=6:2:2 そして『調査書』の学年間の比重は、第1学年:第2学年:第3学年=1:1:3となります。これまでのような他者による評価ではなく、生徒自らが自分を見つめ、『自分の性格や得意なこと』、『興味や関心のあること』、『これからの自分がどうなりたいか』などを考慮し、将来の夢や目標を主体的に考えて『自己表現カード』を作ります。これを面接時の材料にして『自己表現』として合わせて評価します。何事も与えられることに受動的に対応するだけでは実社会で通用しないという、これまでの反省から、自ら考え自主的に行動することで、あらゆる場面で活躍できるグローバル人材を育成しようという、新しい教育への転換期になるのかもしれません。

 このような入試制度の変更だけでなく、中学校の学校生活にはさまざまな変化が見られるようになりました。部活動への参加について、これまでは多くの中学校で生徒全員が何かの部に必ず所属し、活動するものとしてきましたが、今後は部活動には自由参加に変更するというのです。 スポーツ庁による2017年度『運動部等に関する実態調査』によると、公立中学校の部活動加入方法は、『全員入部制』32.5%、『希望制』66.7%、『その他』0.7%となっています。20数年前1996年時点で中央教育審議会の答申は『部活動は、教育活動の一環として子どもたちが自発的・自主的に活動を組織し展開されるべきものでありながら、学校が画一的に活動を強制したり、勝利至上主義的な考えから休日もないような活動を強制したりするような一部のあり方』に警鐘を鳴らしていました。その当時『全員入部制』としている学校が61.2%だったといいますから、現在は状況が随分変わっていることがうかがえます。ただ、部活動加入が自由である学校が増えても、部活動加入率は2016年度調査で男女ともに依然9割を超える状況が続いています。

部活動についての生徒たちの位置づけも、以前より少し変わってきているのかもしれません。部には所属しているけれども、あまり活動に参加していないいわゆる『幽霊部員』というのは以前からいましたが、『部活命』で熱中してやっている生徒が減っているように感じるのです。教育現場の働き方改革の一環で、部活動の活動日数が減少したり、熱心な指導者も減ったりしているせいかもしれません。

では、部活動をしない生徒たちは何をしているのでしょうか。学校外のクラブチームに所属してスポーツを楽しんだり、ボランティア活動に勤しんだり、読書を楽しんだり、楽器演奏や絵画などの趣味に没頭したり…考えてみれば色んな有意義な過ごし方がありそうです。しかし、ただ単にゲームやユーチューブ視聴にだらだらと惰性で時間を費やすのだとしたら、それはとても残念なことです。体力的に疲れていないので就寝時刻が遅くなり、ひいては生活リズムがくずれる場合もあります。

部活動は学校という場でありながら、クラスや学年の枠を超えて生徒同士が組織するものです。自分の体験を振り返ってみると、上下関係を初めて意識する場であったことに気付きます。そのような大人のいない状況で、生徒たち自らが、自主的にチームを強くしたり、優れた作品を創作したり、より高度なパーフォーマンスを求めてさまざまな工夫を凝らしながら活動していきます。そしてその努力の成果が出たときの喜びは何物にも代えがたいものになるでしょう。そんな成功や達成感を得られるような体験を積み重ねることは、勉強とは違う意味で人間力を育む大きな糧になります。

ただし、楽ではありません。部活動を頑張る生徒たちは、必然的にやるべきことが多くなり、部活で体力的に疲れたり、宿題をする時間が制約されたりすることも多々あります。そのために計画的に行動する必要が出てきます。忙しい中で優先順位を考えて行動しなければなりません。部活全体の組織を上手く運営するためには、他の部員と相談しながらリーダーシップを発揮しなければならない場面もあります。そんな学生時代しかできないようなことを、子どもたちにはたくさん体験して欲しいのです。大人になって気付きます。社会に出ても同じだということに。社会もそのような人材を求めています。主体的にさまざまなことに取り組む経験を積んで、人間力をしっかりとつけてほしいものです。

2020ムスカリ