広島県公立高校入学者選抜制度の改善について
広島県教育委員会が9月に公表した公立高校の入試制度改善案について、先月号で取り上げましたが、12月中旬の教育委員会会議において改善内容が決定されました。
改善の主な内容
○全ての高等学校・学科において,教育目標(スクールポリシー)や育てたい生徒像,入学者受入方針(アドミッション・ポリシー)などを明確に示す。
○入学者選抜を「一次選抜」と「二次選抜」の2回とし,入学者選抜に係る期間を短縮する。
(1) 選抜の内容
ア 一次選抜
・全ての高等学校・学科において、学力検査の実施及び調査書の活用による入学者選抜を実施する。学校・学科ごとに、独自検査の実施を可能とする。
・全ての高等学校・学科において、受検者全員に「自己表現カード」を作成させ、当該カードを活用した自己表現を実施する。
・学力検査、調査書及び自己表現の比重は、次の割合を基本とし、学力検査における傾斜配点を可能とする。学力検査:調査書:自己表現=6:2:2
・高等学校・学科ごとに、入学定員の一部において、学力検査や調査書等の比重の設定、学力検査における活用教科の設定、調査書における活用教科の設定や傾斜配点を可能にする。
イ 二次選抜
・「一次選抜」の合格者が定員に満たなかった高等学校・学科においてその特色を踏まえて入学者選抜を実施する。
(2) 調査書
ア 中学校において作成する調査書については、次のとおりとする。
・記載内容:志望校、氏名、性別、学習の記録(評定)、特記事項
・対象学年:第1学年から第3学年まで
イ 学習の記録(評定)における学年間の比重は、次のとおりとする。
・第1学年:第2学年:第3学年=1:1:3
《広島県教育委員会HPより》
9月に発表された素案では、「中学生活の途中で学力が伸びた場合、十分な評価につながらない」との声を受け、調査書の中学1年での成績を反映しないこととしていましたが、1・2年の比率を下げて反映することになりました。もし1年生の成績が評価の対象から外れたら、「1年生ではあまり真面目にやらなくても、2年生から頑張れば良いだろう!」などという考えも出かねません。しかし、当然のことながら1年生から学習意欲を持って頑張った成果の延長上に、2・3年生の成績があるわけですから、3年間の成績を評価するのは妥当な判断だと思われます。中学3年間の学習の基盤が中学1年にあることはいうまでもありません。
そしてこの制度改善は、令和5年度入学者選抜(現在の小学校6年生が対象)から実施することになりました。当初は現中2生から調査書について改善する方向でしたが、在学途中での制度変更は避けられました。
今回の改善で選抜材料が、学力検査:調査書:自己表現=6:2:2となり、学力の比率が上がったわけですので、学校の成績はもとより、これまで以上に学力をしっかりつけていくことが重要です。
そして今回新しく導入される『自己表現カード』を活用した『自己表現』では、他者による評価ではなく、生徒自らが自分を見つめることを求めています。自分の性格や得意なこと、興味や関心のあることなど、自分自身を理解するところから、『これからの自分がどうなりたいか』を考え、将来の夢や目標を主体的に選んで行動していくことを期待しています。
選抜する高校側も教育目標(スクール・ポリシー)や育てたい生徒像を示し、学力検査や調査書の比重や傾斜配点などで独自性のある選抜が可能になります。受験生は自分の将来像をふまえて受験校を選ぶ必要があります。
近年学校では、アクティブ・ラーニングという手法が盛んに導入され、今年度から福山市内の一部の公立中学校で、英語の『ラウンドシステム』という新しい学習法が導入されるなど、様々なアプローチが行われています。大学入試改革は振り出しに戻る形にはなりましたが、グローバル人材育成を目指す新しい学力観の方向性は変わりません。学力だけではなく、知・徳・体バランス良く身に付けることが望まれます。