2019とんど

スマホとの付き合い方

交流サイト(SNS)やオンラインゲームなどに没頭する「インターネット依存」の疑いがある中高校生が2017年度で推計約93万人に上るという調査結果が、昨年夏に厚生労働省より発表されました。2012年に行われた前回調査では52万人だったといいますから、急激な増加といえます。

調査は2017年12月~2018年2月、全国の中学48校と高校55校の全生徒を対象に行われ、6万4千余人から回答を得ました。質問内容は下記の8項目で、5項目以上が当てはまる場合を「病的な使用」としています。その結果、「病的な使用」の割合は、中学男子10.6%、中学女子14.3%、高校男子13.2%、高校女子18.9%となりました。

ネット依存に関する8項目の質問と「当てはまる」と答えた人の割合(高校1年生)

◇ネットに夢中になっていると感じる 58%

◇予定よりも長時間使用する 55%

◇制限しようとして上手くいかなかったことがある 41%

◇トラブルや嫌な気分から逃げるために使用する 27%

◇使用しないと落ち着かない、いらいらする 22%

◇熱中を隠すため、家族らにうそをついたことがある 17%

◇使用時間がだんだん長くなる 12%

◇ネットのせいで人間関係などを台無しにした、しそうになった 9%

このようなネット依存急増の背景は、いうまでもなくスマホの急速な普及であるわけですが、世帯当たりのスマホ保有率は、2012年の49.5%から2017年75.1%へと顕著な上昇が続いています。

今回の調査では、中学生の7割強、高校生の9割強がスマホを利用しており、その主な使途は、動画サイトの視聴、オンラインゲーム、SNSなどです。

ネットの使い過ぎによる問題として、生活習慣の乱れから「成績低下」、「授業中の居眠り」がまず心配されます。またSNSを介したいじめやプライバシー侵害の問題なども発生しています。2017年にはSNSに自殺願望を投稿した高校生が殺人事件に巻き込まれたという例もあります。

文部科学省ではこのような実情を受け、関係各省庁や事業者と協力し、スマホやSNSを安心・安全に利用するための啓発活動「春のあんしんネット・新学期一斉行動」を2月から5月まで実施することを発表しました。学校によるモラルの指導の他、家庭でのルール作りやフィルタリング活用の重要性を保護者に呼びかけていくとのことです。

さてこのスマホという文明の利器、確かに便利な道具であり、さまざまな場面で活躍してくれます。電話としての機能は当然ですが、メールやラインなどのコミュニケーションツールとしての機能以外に、財布、学習、各種辞典・百科事典、カメラ、タイマー、スケジュール管理、ネットショッピング、乗車券やその他チケットの予約・購入、ニュース・天気予報など最新情報の閲覧、新聞・書籍・雑誌のデジタル版購読、音楽鑑賞、動画鑑賞、ナビゲーション、ルート・乗り換え検索、万歩計、健康管理、災害警報…挙げればきりがありません。詳しい人に聞いてみると、外出先から家電製品のスイッチのオン・オフはもちろんのこと、買い物中に冷蔵庫の中の卵の残りの個数まで確かめられるようになるとのこと(苦笑)。AIの進化も相まって、まだまだスマホの用途は拡大していきそうです。人間の欲望は便利な生活をどこまでも追い求めていきます。

ちょっとわからないことがあるとき、ネット検索してみるとすぐに解決してくれるようなことが度々あります。そんな便利さの恩恵にはとても感謝していますが、何でもかんでも頼りにしていると、「人間の能力は大丈夫なのかな…」と少し心配にもなってきます。スマホがあることで私たちの生活は本当の意味で豊かになったのだろうかと、ふと思います。「スマホのない生活に戻ってみるのはどうだろう」と考えてみます。ほんの数年前まではこんなものは無かったのです。ただ、仕事でどっぷりと頼りにしている方々にとっては無理な相談かもしれませんが。スマホやネットが無ければ、必然的にさまざまな本や紙の媒体を読んで色々なことを調べたり、その情報を自分で取捨選択して判断したりすることが格段に増えることでしょう。またSNSなど気にすることなく、ゆったりと好きな本を読んだり、自分の趣味に没頭したり、自分にじっくりと向き合う時間を持てるのではないかと思われます。便利さからスマホが手放せず、すぐにスマホを手に取ってしまうというのは、常に何か情報に触れていなければ不安だというような強迫観念に縛られている状態です。スマホを活用するつもりが、逆に振り回されているというのでは本末転倒です。子どもたちにスマホを与えておいて制限する以前に、大人たち自身がスマホとの付き合い方を考えるべきなのかもしれません。

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