立泉寺アジサイ「大学入学共通テスト」と真の学び

少子化が進展し、大学進学該当年齢の18歳人口は1992年の205万人から2014年の118万人まで大幅に減少しました。この間、大学進学率は1992年の38.9%から2014年の56.7%へと増加。その結果、大学進学が全体的には容易になり、学生の学力不足がクローズアップされるようになりました。その一方で日本の未来に目をやると、高齢化がますます進行して生産年齢人口は急減、グローバル化はどんどん進んでいくことは明らかです。そんな厳しい時代を生きぬく力を、子どもたちにしっかりと身に付けさせなければならないという強い危機感から、大学入試改革をはじめとする今回の教育改革はスタートしました。

2021年1月から始まる「大学入学共通テスト」では、現在のセンター試験で実施されているマーク式の問題に加え、数学と国語に記述式問題が導入されます。また、英語については2023年度までは大学入試センターが出題する問題と、英語4技能を測定する英語の民間資格・検定試験を併用し、2024年度からは民間資格・検定試験に一本化することになっています。

従来の「大学入試センター試験」は、たとえば数学であれば、与えられた式や問題の誘導にしたがって計算し、その結果の数値をマークするというもので、定理・公式を覚えていてすばやく計算する力が求められてきました。学校教育法では学力の三要素を、1. 基礎的な知識・技能2. 思考力・判断力・表現力等の能力3. 主体性・多様性・協働性、と規定していますが、これまでの入試はもっぱら1の基礎的な知識・技能を中心に測定するものであったといえます。「計算問題を解くスピードが速い」、「英単語をたくさん覚えている」、「さまざまな問題の解法を知っている」…といった知識や技能は、さまざまなことを思考するための基盤であり大事な要素です。しかしながら、それだけではさまざまな場面で活用できません。

そこで求められているのが、「思考力・判断力・表現力」です。物事の中から問題を見いだし、その解決法を探して計画を立て、解決につなげていく力です。また、将来の目標に対してチャレンジをし、周りの人々とどう関わりながら自分の資質を役立てていくのかというリーダーシップやフォロワーシップを発揮するための「主体性・多様性・協働性」といった要素も評価されようとしています。

昨年2017年11月に行われた試行調査では、「社会との関わりを意識した出題」、「複数の資料を読み取り、多面的に考察する力を問う出題」、「解答形式の多様化」など、これまでにはない要素が見られました。今までのような知識や技術の丸暗記では太刀打ちできない共通テストに向けて、普段からしっかりと授業理解を進めていくことが大切です。もちろんこのような学力というのは、高校生になってから身に付けるというのではなく、小学生・中学生・高校生という段階ごとに、その時期その時期にふさわしい取り組みをしながら、徐々に積み上げていくべきものです。では、日頃の学習にどんな姿勢で取り組み、日々をどのように過ごすことが必要なのでしょうか。

○教科で学ぶ課題を、身近な事柄と結びつけて考える。

○本や新聞を読む習慣をつけ、世の中のことに広く興味を持って考える。

○「どうしてそうなるのか」を常に考えながら課題に取り組んだり、世の中のことを考えたりする。

○自分の考えを論理的に表現する。

どれもこれも当たり前のことのように思われます。しかしながら、教科学習で学んでいる内容と、世の中のさまざま事象があまり結びつかず、「何のための勉強なのか」が実感できないような場面を、これまで私たちも度々経験してきたことは否定できません。まるで学問の世界と実社会が別物であるかのように感じられる「学び」が当たり前になっていたというのが、これまでの日本の教育の実情です。勉強していることが世の中のことにいかにつながっているかがわからなければ、子どもたちが社会のことに興味を持てなくなるのも当たり前のように思われます。これからは、先生から一方通行的に教え込まれる勉強ではなく、創造性を持って自ら主体的に取り組む、自律性のある「学び」へと変貌していかなければならないということでしょう。

学生時代に学習塾を創業し、現在は都留文科大学特任教授でもある、子育て・教育デザイナーの石田勝紀氏によれば、「できる子は、勉強時間以外も学んでいる」のだそうです。「彼らは、寝ているとき以外、人と話をするときも、テレビを見ているときも、街を歩いているときも、感じ、考え、自分の意見を持つ習慣を持っていて、それによって教養が深まり、考える力が深まり、記述力や小論文といった自己表現力もつけている」というのです。

なるほど、「生きること」=「学び」になれば、さまざまなことを獲得するのが効率的になるでしょうし、「学び」の時間の絶対量が格段に増え、無駄な時間など存在しなくなります。そのためには「考えることは楽しいことだ」ということに気づかなければなりません。「生きること」=「学び」=「遊び」=「楽しみ」=「豊かな人生」…「学びのある豊かな人生を楽しく生きる」そんな理想を掲げて、日々を過ごしたいものです。

ゴーヤ