赤色の菊

AI時代を生きる

文部科学省の専門家会議では、学校での生成AIの活用について充実していくために、具体的な活用例や注意点を盛りこんだ新しいガイドラインの案を年末にまとめました。

AI(人工知能)の技術は目まぐるしい発展を遂げており、さまざまなことがAIによって可能になってきています。教育界にもAIの波は押し寄せています。多くの学校では、テストの答案が人手ではなく、自動採点されるようになりました。少々の採点ミスはあるようですが、先生たちの労働時間を大幅に削減し、学校の先生方の働き方改革の推進に一役買っているようです。私たちもAIの活用法を学ぶために研修会などに参加することがあります。大学で最先端のAIについて研究している先生から色々な活用例を学んでいると、なるほど便利なものができたものだと、感心しきりです。ただ、使ってみるとすべてを正しく処理できるわけではなく、使う側が正しいものかどうかを吟味しながら付き合わなければならないことにも気づかされます。

学校での生成AIの活用について文部科学省は、使いこなす力を育てることの重要性の一方で、子どもたちの創造性を育むことへの影響や、偽情報の拡散などの懸念もあることから、昨年来暫定的なガイドラインを示してパイロット校を指定し、検証を行ってきました。今回まとめられた新ガイドラインの中では、英会話の相手になるなどの子どもたちの学習での利用や、教職員が業務で使う際などの具体的な活用例を示しているそうです。ただし、小学校の児童が直接使うことは慎重に見極める必要があるとの見解を出しています。

ラベンダー

一般的に、教育現場でAIができることとして次のようなことがあげられています。

〇 教育の質の向上

AIが生徒の学習進度や理解度を把握し、それに基づいて最適な学習課題を提供することで、生徒の理解を深め、学習効果を最大限に引き出すことができます。

〇 教員の作業負担の軽減

教育現場では教師の過重労働が問題となっていますが、生成AIの導入によって、過重労働問題を大幅に軽減することができます。

〇 生徒のモチベーションの向上

生成AIによって提供される個別化された学習体験は、生徒の学習意欲を高めます。自分の興味や能力に合った学習内容に触れることができるため、生徒は学習に対してより積極的に取り組むようになります。

〇 生徒の思考力や問題解決力の向上

生成AIが、生徒が新しいアイデアを考えたり、既存の知識を組み合わせて新しい解を見つけ出すための手助けになります。  ところが、AI活用にはデメリットも想定されます。皮肉なことに、意図するメリットに相反するような影響も懸念されます。

〇 雇用の減少

AIの活用で、自動化が可能なものは人の力を借りなくてもできることが増えるわけですから、人の労力は不要になります。

〇 考える力の衰退

先生・生徒ともに自分自身で考える機会が奪われるわけですから、必然的に考える力は衰えてしまうことになります。

〇 学習意欲の減退

今まで「人」対「人」で行われていた教育が機械的に行われるとすれば、生徒のモチベーションを保てないかもしれません。人間は感情の動物であるのはいうまでもありません。教師の言葉や人間性によって生徒のやる気が引き出されるというのはよくある話です。

このように教育現場へのAI導入には、功罪ともに見込まれますが、社会全体の要請から考えると時代の趨勢は変わらないでしょう。では、すべてAIに任せておけばよいのかといえば、そうではありません。AIでは教えられない力を養うことこそが、より重要な時代になるでしょう。

〇 創造力

過去のデータに基づいて類似したものを生み出すのがAIです。しかし、ゼロからアイデアを生み出すことはできません。自由な遊びや自由な発想から創作活動をすることで、失敗を恐れずに試行錯誤し、さまざまなことに挑戦しようとする気質を育むことができます。

〇 共感力・協調性・コミュニケーション能力

人間社会で生きていくには、相手の気持ちを理解し共感することが大切です。家にこもってゲームやユーチューブに没頭するのではなく、スポーツやクラブ活動、ボランティアなどに参加し、他の人と関わりながら目標を達成するような活動により、コミュニケーション能力を高められます。

〇 柔軟性・批判的思考力

人の意見やAIが出した結果を鵜呑みにするのではなく、さまざまな視点から考えたり、批判的に思考したりすることで、柔軟に物事を判断する力を身につけなければなりません。

〇 問題解決能力

AIはある程度の問題であれば解決することができますが、複雑な問題や予測不可能な問題に対応できるわけではありません。自分の頭で考えて行動したり、失敗から感じ、学ぶ機会を増やす中で、状況に応じて論理的に考えて判断し、行動する習慣をつけることが必要です。

AI時代を生きていく子どもたちの将来の可能性を広げるために、家庭や学校、社会全体が一つになってこれらの力を育める環境を作ることが求められています。

パンジー