ミゾカクシ

お金の勉強

先日告示された東京都知事選の某候補者は、公約の一つとして「都立高校の生徒会長に100万円の“ばらまき”を行う」と発表しました。「(生徒会長としての)公約を考え、生徒に選んでもらう。この経験を高校時代からすることで、政治が始まるという意識改革をしたい。これが私の成長戦略」と意図を説明しました。これに対しネット上では、《これは面白い》《高校生のこの経験は金額以上の投資効果をもたらすと思う》といった賛成意見がある一方、《高校生は100万円が支払われないとまともな企画・立案もできないとバカにされているのと同じ》《お金がつかないと政治に関心を持たなくなるということがミスリード》などと賛否両論。この公約は、彼が安芸高田市長時代に『生徒が決める100万円事業』で成功した事例にあるように、高校生の政治的な素養や経済感覚を育てるために、大変面白い試みのように思われます。

選挙の投票率の低さに象徴されるように、日本国民の政治離れは顕著です。自分が関わっていない選挙だから、さらに政治が他人事になってしまい、主権者と政治が離れてしまう負のスパイラルに陥っています。この原因として考えられていることの一つに、家庭や教育現場で政治やお金について議論することが避けられてきたことが、しばしば挙げられます。一般的に家庭で子どもが家計のことなど心配しようものなら、親からは「そんなこと心配しなくていいの。あなたの仕事は勉強、勉強!」などと返されるのが関の山。学校では政治・経済やその他の社会科の教科学習で勉強しているはずなのに、多くの人は世の中の仕組みをよく知らないまま社会に放り出されているといっても過言ではありません。ところがここにきて、「もっと子どもの頃から、政治やお金について具体的に学んだりトレーニングすべきだ」という声が聞かれるようになりました。

ナスタチウム

2022年4月から、成年の年齢が20歳から18歳に引き下げられました。社会に生きる一個人として尊重されるだけでなく、社会人としての責任を負うことになるわけですから、世の中の仕組みを知ることが求められるのは当然です。高校でも家庭科の教科書が新しくなり、「お金」ついての授業の内容がより詳しくなりました。金融庁のHPを見ると、政府をあげて金融教育啓発に力を入れていることがわかります。

そんな折、経済の教養が学べる小説「きみのお金は誰のため―ボスが教えてくれた『お金の謎』と『社会のしくみ』」田内 学 著 が、昨年秋の発売後3か月で販売15万部を突破するなどし、「読者が選ぶビジネス書グランプリ2024」の総合グランプリとリベラルアーツ部門賞をダブル受賞する大ヒットになっています。身近な問いから、「お金の本質」と「社会のなりたち」を学ぶことができる一冊です。

《あらすじ》

ある大雨の日、中学2年生の優斗は、ひょんなことで知り合った投資銀行勤務の七海とともに、謎めいた屋敷へと入っていく。そこにはボスと呼ばれる大富豪が住んでおり、「この建物の本当の価値がわかる人に屋敷をわたす」と告げられる。その日からボスによる「お金の正体」と「社会のしくみ」についての講義が始まる。

ゴデチア