新緑の季節、あらゆるものが新しい命に満ちあふれているように見えます。生徒のみなさんも生き生きと学校生活を送っています。新入生のみなさんも新しい環境に慣れてきた頃
ではないでしょうか。
さて、4月は小・中学生の全クラスで学力テストを実施しました。今回のテストは特に学年のスタート時点であり、現時点における実力を客観的に測定するという意味で重要です。直接的には、今回のテストでできなかった問題をもう一度やり直して理解すれば、その問題は自分のものになります。正しい知識や解き方がわかれば、これまで「できなかった問題」が「できる問題」になるわけですから、確実に実力はアップします。実力を測るだけではもったいない材料です。大学入試などでも、赤本などで数年分の過去問を複数回解くことは、その学校の出題傾向をつかみ、「その学校の問題を解く頭」をつくるために有効であることはよく知られるところです。そして結果全般から自分の強みや弱点を知ることで、今後の学習方法や学習量を修正する好機にもして欲しいと考えています。
今回中学3年生は、盈進高校で教育ネット21のメンバー塾の生徒が一堂に会しての受験となりました。隣に座るのは初めて見る顔。これまで塾や学校のクラスメートとならんで受けていた学力テストや定期考査とは、まるで違う緊張感で、否が応でも受験学年となったことを自覚させられたはずです。私たちがことばで言うよりもずっと説得力があります。試験終了後にあった各教科のワンポイント解説も新鮮だったことでしょう。学食での昼食も楽しかったようですが…いろいろな面で大いに刺激にしてくれたことと思います。心なしか「中3生の顔」らしくなってきたように感じる今日この頃です。
ところで、この学力テストは生徒たちの力を試すだけのものではありません。私たち教える側の通信簿でもあります。「この生徒は、ここがまだ理解できていなかったか…」「この単元は理解が不十分だ」「この分野はもっと力を入れなければならない」…などなど、反省も含め指導方法の修正材料になります。生徒本人と私たちが共通の認識のもとに二人三脚で学習を進めることができれば、着実に実力につながります。
そして学力テストの結果を見ていると、学校の定期テストでは良い点が取れるのに、学力テストでは今一つ取れないケースに出会います。これまでそのような例を何度も見てきました。ある生徒は1年生の頃から定期試験対策はいつもばっちりで、社会などは常に95点を上回る得点!ところが、中3になり1年生からの総復習のために学校で行われる診断テスト(セミナーテスト)では6割程度しか取れません。驚いて本人にたずねてみると、定期試験前に用語をノートに何度も書いて丸覚えをして臨むことで高得点を取っていたが、本当は何もわかっていないのだといいます。また別の例では、中3から入塾されたその生徒も、それまでの定期テストでの英語は95点以上を維持していましたが、入塾されてすぐの4月学力テストでは5割弱の得点。本人の話では、それまで通っていた塾では教科書準拠の問題集での反復をしていたので、学校の方は取れていたけれど、実は文法をよく理解していなかったとのことでした。
これらの例は、両者とも短期記憶に頼った学習方法であり、その場しのぎのやり方だといえます。定期試験で高得点を取り、高校入試の評価となる内申点を稼ぐことは重要なことですが、それ以上に将来にわたってその学力を使えなければ、本当の学力とはいえません。
将来に生きる真の学力が身についているかがまず試されるのが、高校入試です。今春の広島県公立高校入試問題の難化は、県内外で話題となりました。具体的には、国語で2年前から始まった「様々な形態の文章」を用いた条件作文の問題は、図書委員会の話し合いをふまえ3つの資料に基づいて新1年生に読書を勧める文章を書くというものでしたが、必要な資料を選択させるなど条件が複雑化し、字数制限も200字と増えています。また社会では、選択問題が昨年まで12~14題であったのが5題と減る一方、文章を記述して答える問題が、昨年までは7~8題であったのが13題となり、大幅に増えていることなどが注目されます。単に用語で答えたり、選択肢から選ぶのとは違い、題意を正しくとらえて必要なことを記述しなければ正解になりません。与えられた時間内に要領良くまとめて表現する能力も求められます。全般に知識の習得だけでなく、様々な資料を読み取って比較したり、論理的に思考する力、表現する力が一段と問われる内容となったのです。
この高校入試の変化は、2020年より実施される大学入試改革にともなう教育界全体の改革がすでに始まっていることの現れです。本年度から改定となった中学校の教科書は、前回のものより5教科合計で約7%増量されましたが、内容的にも、アクティブ・ラーニングを取り入れたり、応用問題を増やしたりすることで、思考力養成を意図したものになっていることがわかります。英語を例に挙げると、教科書で学習する文法の学年配当はほとんど変化がありませんが、教科書の本文に使われている単語や熟語表現が幅広く多様になり、覚えるべき内容が増えています。より深く掘り下げた学習により、厚みのある学力を目指していると考えられます。
ゴールデンウィーク明けには、各中学校・高校で中間考査の試験範囲が発表されます。丸覚えやその場しのぎの勉強にならないように、しっかり教科書を読んで、じっくりと理解するところから始めてください。そのためには、日程を逆算して計画的に早めに準備を進めてください。試験範囲が発表されなくとも、出題範囲は4月以降に学習したところ全部だとわかっているわけです。提出課題も出されますが、単に作業にならないように、理解度をチェックするための材料になるように活用しましょう。新中1生、新高1生にとっては、初めてのことが多く戸惑う面もあるかもしれませんが、最初が一番肝心です。後に残る「真の学力」を積み上げていけるよう頑張りましょう!私たちも全力でバックアップしていきます。