環境の変化
4月というのは、日本では入学、進級、就職、異動…など生活環境が大きく変化する時期です。新しい生活への期待があり、やる気を持っているものの、その環境に適応できずに精神的に落ち込んだり、体調を崩してしまったりするようなことがあります。「五月病」といわれるものです。新しい生活に適応しないまま4月を過ごし、ゴールデンウィーク後あたりに理由不明の心身の不調におちいってしまうといったところから、この名前がついたようです。医学的な診断名としては「適応障害」、あるいは「うつ病」となるそうです。
そして近年では、「五月病」とは程度や症状の違いがありますが、小学生から高校生のある時期に生じる環境不適応や、顕在化する問題ついて、新しい名前が生まれてきました。

 

小1プロブレム
小学校に入学したばかりの1年生が、集団行動がとれない、授業中座っていられない、先生の話を聞かない、一定時間静かに過ごせないなど、学校生活になじめない状況が続くことや、クラス全体の授業が成立しない状態をいいます。小学1年生というのは、入学前の幼稚園や保育園での生活習慣、家庭環境の違いなどにより、集団生活への適応力に大きな個人差があるものです。スムーズに小学校教育に慣れるために、幼稚園や保育園と連携し、決められた席に座っていることや、読み書きや計算などに一定期間集中させる練習などのプログラムを導入したり、入学後も担任以外のスタッフをつけてサポートするなどの対策がとられています。

 

小4ビハインド
算数・数学の基礎基本が、小学4年生までに集約されており、この時期までの学習のほころびが見えてきたり、この時期につまづいて遅れをとることで、算数がどんどんわからなくなっていくというものです。高学年~中学へとつながる大切な節目となる時期です。

 

中1ギャップ
小学校を卒業して中学1年生になると、学校生活や学習内容が大きく変わります。学校の授業についていけなくなったり、人間関係の難しさから不登校になったりするなど、さまざまな問題に発展する可能性があります。
中学1年生にとってハードルとなると考えられることをあげてみます。
・勉強が難しくなり、量も増えること
・科目により担当する先生が違い、成績が受験の評価(内申点)につながること
・定期テストに向けた勉強方法
・部活動のハードさ
・先輩や友人との関係
これらに加え、最近では携帯電話(スマホ)を持たせるケースが増えており、メール(ライン)、ゲームなどの過度の利用により、家庭で本来費やすべき時間が削られたり、友人とのトラブルに巻き込まれたり、スマホ中毒のような症状におちいる場合もあり、細心の注意が必要となります。

 

中二病
『中学校2年生ぐらいの子供にありがちな言動や態度を表す俗語。自分をよくみせるための背伸びや、自己顕示欲と劣等感を交錯させたひねくれた物言いなどが典型で、思春期特有の不安定な精神状態による言動と考えられる。』との日本大百科全書の解説がありました。いわゆる思春期の自我の発現過程の現れだと考えられます。
中学2年生になると勉強が一段と難しくなります。特に積み重ねの教科といわれる数学と英語。数学では、関数・図形・証明など、英語では、助動詞・不定詞・動名詞・比較など、入試や高校への基盤となる重要単元が目白押しです。『大学入試は中2から!』などといわれる所以です。
一方学校生活では後輩ができ、部活や生徒会では中心的存在となりいっそう忙しくなります。ある程度は中だるみがあるというのも仕方がないことかもしれませんが、学校での課題提出や定期試験の準備などポイントとなる所では、押さえるべきことをしっかり押さえ、後に残る学力を積み上げていかなければなりません。

 

高1クライシス
高等学校進学後、学習や生活面での大きな環境変化に適応できず、生徒が不登校におちいったり、退学したりする現象で、大半が高校1年時に集中していることから、この名前がついたようです。高校では徒歩圏内ではない学校への通学になることもしばしばで、幼少期からあるつながりがなくなり、新しい人間関係を構築することも必要です。また学習内容が一気に難しくなり、量も飛躍的に多くなります。学習量が多いということは、それだけ進むスピードも速くなるということです。そうすると生徒たちからすればとても不親切な指導に見えてしまいます。学校は、入学時に合宿を行い、高校での各教科の予習の仕方など学習方法を学ばせる場を作ったりして苦心していますが、中学との温度差にとまどううちに落ちこぼれてしまうというケースが少なくありません。特に時間のかかる教科である数学と英語の取りこぼしは致命傷になりかねません。

 

環境の変化に上手く適応できない典型的な例をあげましたが、このような状況は時期に関係なく生じる可能性があります。いずれの場合も学習面の不安が大きな要因となります。正しい生活リズムの中で、自分の学習ペースを維持することです。そのためには受け身ではなく、つねに攻めの姿勢で学習に臨むことです。基本からしっかり理解し、自信を持って学習できる環境づくりが大切です。