水仙芽生え

文系? それとも理系?

「雪がとけたら何になる?」と問われたとき、あなたは何と答えますか。「もちろん水だよ」という人もいれば、「雪がとけたら、春になるね」と答える人もいるかもしれません。前者は理系的な思考で、後者は文系的な思考だなどといわれます。

普通科や総合学科の高校に通う生徒たちは、1年生の2学期には文系・理系コースに分かれる「文理選択」を迫られます。早くから将来設計のある生徒にとっては、ごく自然に決定できることではありますが、選択に悩む生徒は少なくありません。どのように考えるべきなのでしょうか。

大学の学部を「文系学部」、「理系学部」、そして両分野の要素を必要とする「文理融合学部」に大雑把に分けると以下のようになります。

 

文系学部 文理融合学部 理系学部
文学部・法学部・社会学部・外国語学部・教育学部・国際関係学部・介護福祉学部 など 情報学部・生活科学学部・経済学部・社会心理学部・スポーツ科学部・生活科学部 など 工学部・理学部・理工学部・薬学部・医学部・歯学部・看護学部・農学部 など
英語・国語地歴公民での受験が多い。入学後に数学や統計学を学ぶ場合もある。 入試科目は学部により様々ある。さらに文系型・理系型で入試が分かれる場合もある。 数学・理科で受検することが多い。研究発表や論文で英語が必要になる場合もある。

 

もちろん、国公立大などの第一関門となる共通テストでは、受験教科が多くなります。また、教育学部であっても数学や理科などの理数教科を扱う学科を目指す場合は理系コースになりますし、文系学部であっても必要に応じて統計学や数学を履修する場合があります。

文理選択にはいくつかの考え方がありますが、合理的な道筋としてまずあげられるのは、「将来就きたい職業」という目標から考えることです。家業を継ぐような場合はもちろんのことですが、目標がはっきりしていれば、それに向けて無駄なく最短距離で準備をしていくことができます。

しかしながら、高1の時点ではっきりとした将来像がまだ描けないでいる生徒は少なくありません。そのような場合は、どんな分野を学んでみたいかを考えます。興味の向かないことに時間を費やすのは、得るものが少なく、苦痛をともなうものになりがちです。一方関心を持っていることや好きなことを勉強するとなると、自然と前に進んでいけるものです。知的探求心をふくらませていくその先に将来の自分の仕事が見つかるならば、大変幸せなことです。

また発想をがらりと変えて、自分の趣味や遊びに関連するところから考えてみるという手もあります。たとえばコンピューターに興味がある人ならば、ハードウェアの開発や製造をする仕事もあれば、プログラミングを駆使して新しいソフトウェアを創り出す仕事もあるわけです。そんな仕事に就くためにはどんな進路を選ぶべきかを考えるのです。特定のスポーツが好きな人もいるでしょう。プロ選手になるのはどのスポーツも難関ですが、そのスポーツに関わる仕事はたくさんあるはずです。身体のマネジメントを学ぶためにスポーツ科学部や医学部を志したり、経営的なマネジメントを学ぶために経済学部に進んだりするのもいいでしょう。

いずれの場合も大切なことは、自分をよく知ることです。進路選択はその次の職業選択につながっていくわけですから、一生を決める岐路ともなりうるわけです。自分の得意なこと、不得意なことはもちろんのことですが、進学には経済的な負担をともなうわけですから、それを支える親ともよく相談する必要があります。国公立大学か私立大学かだけでなく、自宅から通える大学なのか下宿する必要があるかによっても、就学費用は大きく違ってきます。そのような要素もふまえて進路を検討する必要があります。

また、単純なイメージや教科の得意・不得意だけで選択するのではなく、しっかりと調べることが大切です。

当然のことながら、高校以降の学習は、進度が進むほど難解な内容になります。志望動機や適性がしっかりしていないと、ミスマッチになってしまうこともあります。途中でくじけてしまって文転(理系➜文系)するようなケースもありますが、学校での履修教科に無駄や負担が多くなるので、おすすめはできません。理転(文系➜理系)は、教科の性質上困難です。

大学や専門学校の先には、実際に職業に就くわけですが、これまで存在していた職業が、AIの発達によって機械にとって代わり、なくなってしまうものも少なくないことが予想されています。また国内においては少子高齢化がますます進んで、労働人口が減っていくことは明らかです。医療や介護の分野はますますニーズが高まることが見込まれています。そのような時代の流れの中で、職業がより専門的になり、新しい職業が生まれてくることも考えられます。アメリカの情報サイトThe Cheat Sheetの記事「2030年までに人々が就く10の職業」には、次のような職業が紹介されています。

・「生産カウンセラー」《人生の生産性を上げるためにアドバイスをする》

・「微生物バランサー」《微生物を査定する専門家》

・「ミームエージェント」《インターネット上の著名人の代理を務める》

・「ビッグデータ・ドクター」《患者の伝記プロファイルと個人データを用いて治療する医師》

・「クラウドファウンディング・スペシャリスト」《クラウドファンディングのアドバイスをする専門家》

・「未来の仕事スペシャリスト/リクルーターの仕事」《将来のキャリアに特化して助言する》

・「組織混乱家/企業かく乱家」《システムの古い企業を覚醒させる》

・「プライバシー・コンサルタント」《プライバシー保護の専門家》

・「未来貨幣投機家」《仮想通貨の専門家》

・「ボットロビイスト」《ボットや、SNSを活用してビジネスやマーケティングを支援する》

我々には想像もつかないような職業が出現しそうです。このような時代を生きぬく子どもたちには、視野を広くしてさまざまなものに興味を持ってほしいものです。そして年齢が進むにつれて徐々に自分の道を選び、職業人となればその道での専門性を高めることで世に貢献していくわけです。ただし、早い時期から自分の不得意分野を決めつけて、自分の可能性を自らせばめてしまうようなことだけは、決してしてほしくありません。「やればできる!」の精神で、将来への可能性を限りなく大きなものにしてほしいと願っています。

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