盈進優勝

ブレイクスルー

この夏の高校野球、広島県大会3回戦での波乱が話題となりました。優勝候補の広陵を福山の英数学館が2-1で破ったのです。広陵といえば言わずと知れた全国屈指の強豪チームであり、現チームも昨年秋の中国大会で優勝し、その後明治神宮大会でも準優勝するほどで、実力は十分でした。英数学館は、現在闘病中の元広島カープ投手の北別府学さんが外部コーチとして指導されたことなどが話題になっていましたが、選手層に厚みのある強豪校にはなかなか歯が立たない状況でした。しかし今回の大金星となった試合の戦いぶりは堂々たるものでした。1回先頭バッターが初球を振り抜いて先制ホームランを放つと、2回にも加点。5回に1点返されますが、そのまま1点リードを守り切ったのです。最終回はノーアウト2・3塁と攻め立てられながら2人を飛球に打ち取り、最後は4番バッターのあわや逆転となる3ランホームランという大飛球を、センターがフェンスにぶつかりながら捕球しゲームセット!投手の攻めのピッチングも奏功したようです。

近年、県東部勢は強豪校にことごとく破れ、早々に敗退することが多かっただけに、この勝利はみんなに勇気を与える大きな一勝となりました。閉塞感を打ち破る、まさにブレイクスルーになったように思われます。英数学館は次戦で敗れてしまいましたが、ベスト4は広島商、尾道、近大附属福山、盈進となり、東部勢が3校も占めることとなりました。そして最終的に決勝戦は尾道と盈進の間で争われ、盈進が熱戦を制して悲願の甲子園への切符を48年ぶり手にすることになりました。盈進野球部は、県東部では常に上位を争いながらも、全国の舞台へはあともう少しのところで敗退というのを繰り返してきましたが、やっと壁を打ち破ることができました。福山城築城400年の福山に、この夏はもう一つ楽しみができました。およそ半世紀ぶりの甲子園で大いに活躍されることを期待しています。

人は意識の中で、知らず知らずのうちに自分の可能性に限界を作っていることが多いといわれます。潜在的に「自分の力はこれくらいのものだ」という意識がはたらくと、壁を越えていくことはできません。たとえば、学校のある科目のテストで得点が前回70点だった生徒に、次のテストの目標をたずねてみると「今度は80点が目標です」と言います。70点から80点になるならば、得点は10点上昇したことになりますから、結果としてそうなった場合は生徒を大いにほめます。しかしながら、目標として「80点」という意識には落とし穴があります。「8割取れればいい」ということは「2割はできなくてもよい」ということになるからです。はじめから2割はわからなくてもいいという意識は、試験勉強を詰めの甘いものにしてしまい、結局のところ現状維持が関の山ということになりかねません。一方100点を目指す人は、間違えた問題は必ずやり直しますし、わからない問題をなくすよう努力します。それでも人間ですから、1問や2問はミスが出たりしてしまうものです。

意識というのは恐ろしいものです。公立中学校の英語で「ファイブラウンドシステム」が導入されて、今年で4年目になります。教科書のアプローチを音声中心に始めて、文法的な理解を後回しにすることで、文法嫌い、ひいては英語嫌いをなくすことを目指しています。ところが、ラウンド初期は、意味のわからない単語に出会っても、意味は分からなくてもよい、音声とストーリーの内容が合致することが第一であるという考え方で学習を進めますので、生徒たちは発音や意味のわからない英単語に出会っても、「わからなくて当たり前、調べる必要もない」という意識が浸透していきます。おかげで生徒たちの単語や文法理解に対する意識が大きく変わってしまいました。塾の授業では時間的制約から効率を考え、文法中心のアプローチになるわけですが、宿題で出会った意味や発音のわからない単語については、必ず辞書で調べるよう指導しています。しかし、残念ながら学校と同じように対応してしまうために、単語力や文法力で大きく遅れをとってしまう生徒もいます。一方で高校入試や大学入試で求められる語彙力や読解力は数段高まっているわけですから、ちぐはぐな感じはぬぐえません。

先月24日(日)、中3生は教育ネット21主催の「英単熟語トレーニングジム」に参加しました。このイベントは、公立高校入試問題から抽出した500個の英単語・英熟語の暗記に丸1日かけて取り組むというものです。参加した生徒たちはみな、語彙力アップに手ごたえを感じているようでしたが、それ以上に、自分の持久力に気付いたり、受験生であることの自覚をいっそう高めることができたりしたのではないかと思います。単語力は一朝一夕に改善するものではありませんが、単語の発音や意味、用法などについて興味が出てきて、覚えるためのヒントも得ることができ、単語を習得しようという意欲も出てくるのではないかと思います。これまでの意識を変え、自分の殻を破って学習方法や姿勢を一段と進化されることを願っています。

暗記会後方より