気候変動

2019.11オレンジ色の花

10月上旬のことです。ソフトボールの練習にいつものグランドを訪れると、「あれを見てくださいよ! 何ていう動物ですか?」施設管理の職員の方にたずねられます。遠目に見ると「タヌキですか?」いえいえ、近づいて見るとタヌキではありません。二ホンアナグマではありませんか! 写真などでは見たことがありましたが、実物を見るのは初めてです。駐車場の周りにあるバラの植栽の根元を溝のように掘り返しているのです。土の中のミミズや虫を食べる、アナグマ独特の採餌行動のようです。近づいても逃げません。そばで声をかけても無反応(苦笑)。そして穴掘りに疲れたのか、はたまた老齢のため衰弱しているのか…自分の掘った穴の中で丸くなって眠り始める始末。穴を掘られて職員さんが困っている様子だったので、市の動物愛護センターや農林水産課に連絡して相談してみましたが、放置するしか仕方がないようでした。あとで知り合いから聞くところでは、警戒感がとても薄い動物だそうで、しかしながら凶暴でもあるので、決して触ってはいけないとのこと(汗)。野生動物も生きていくのは大変なのだろうと思われる出来事でした。

眠るアナグマ

イノシシ、シカ、クマなど野生動物が人里に現れ、農作物の被害が多くなっているのは、やはり生息地域の餌不足が最大の原因でしょう。気候変動によって里山の生態系が大きく変化しているのではないかと考えられます。しかしこのようなことは、同じ哺乳類である人間にとっても他人事ではありません。人の暮らしにも困難が差し迫っているというシグナルにほかなりません。昨年の『西日本豪雨災害』では中四国地方を中心に大きな被害が出ましたが、今年も台風や集中豪雨の被害が甚大なものになってしまいました。今度は中部・関東・東北です。気象を予測するスーパーコンピュータも予測できないほどの激しさだったとのこと。過去の統計データから判断するAIでは対応できないということなのでしょう。これまでの『想定外』が『普通のこと』になりつつあるということでしょうか。社会の授業で「北海道は梅雨が無く、台風も来ないので、夏も快適だ」などとこれまでは学んできたわけですが、今や東北・北海道など北日本でも台風の襲来や集中豪雨を想定した備えが求められています。災害のない安全な場所など、どこにもないのかもしれません。

先日2020年東京オリンピックのマラソンと競歩を行う場所が変更されることが報道されました。日本では冬に行われることの多いマラソン。地球温暖化などまだ顕在化していなかった1964年に開催された前回の東京オリンピックは、10/10~24に行われました。「猛暑の8月に東京で本当にマラソンをやるの?」、そんな疑問を抱いている人も少なくなかったはずです。 今回の札幌への変更の騒動で初めて知ったのは、某国の企業が、自国の人気スポーツの開催時期と重なってオリンピックのスポンサーにならなくなるのを避けるために、8月開催になっているとのこと。企業やIOCや自治体の利害が最優先され、選手の目線で行われないというのは、世界最大のスポーツの祭典を行う意義として、本末転倒としか思われません。9月下旬からカタールのドーハで開催された世界陸上のマラソンと競歩での棄権者の多さに驚き、今さらながらその危険性に気付いたというところでしょうか。

奉納 剣道大会

9月の国連気候行動サミットでは、スウェーデンの環境活動家 グレタ・トゥンベリさん(16歳)のスピーチが話題になりました。彼女は世界のリーダーたちを前に、険しい表情で時に涙を浮かべながら訴えました。「多くの人たちが苦しんでいます。多くの人たちが死んでいます。全ての生態系が破壊されています。私たちは大量絶滅の始まりにいます。それなのにあなたたちが話しているのは、お金のことと経済発展がいつまでも続くというおとぎ話ばかり。恥ずかしくないんでしょうか!…」 気候変動対策となる具体的行動を強く求めています。

旧約聖書の「創世記」に登場する『バベルの塔』の話では、天まで届く高い塔を建設しようとする人間の思い上がりを戒めるために、神が人々の言葉を乱して通じないようにし、混乱させて塔の建設を止めさせてしまいました。人類は現在の便利で快適な文明を捨てることなどできないでしょう。しかしながら、地球温暖化を止めるための魔法のような発明を待ちながら、現実から目を背け、文明のもたらす利益を享受し続けるだけでは、状況は本当に悪化するばかりです。様々な知恵を出し合い、地道な小さな努力を積み上げて、この難題を克服していかなければなりません。未来を生きる子どもたちの豊かな地球を守るのは、今を生きる私たちに課せられた責務です。

黄色い花2019.11