青少年のインターネット利用

テレビコマーシャルというのは、その時代の特徴を映し出す器だとよくいわれます。生徒たちと話す中で、「今一番面白いテレビコマーシャルは何?」とたずねてみると、真っ先に「携帯電話会社のCM!」との声。なるほど、特に春先などは熾烈な競争が目立つように感じます。

2月末内閣府は、「平成28年度青少年のインターネット利用環境実態調査」の結果を公表しました。調査は平成28年11月上旬~12月上旬に行われ、満10歳から満17歳までの青少年3,284人、またその同居の保護者3,541人から回答を得た結果です。以下は内閣府ホームページより抜粋した数値です。

 

青少年がインターネットを利用する機器

スマートフォン47.2%、携帯ゲーム機21.7%、タブレット20.9%、ノートパソコン17.3%

スマートフォンの利用率

小学生27.0%、中学生51.7%、高校生94.8%、保護者85.3%

インターネットの主な利用内容

小学生…ゲーム78.1%、動画視聴60.5%

中学生…動画視聴74.0%、ゲーム72.8%、コミュニケーション67.2%

高校生…コミュニケーション90.6%、動画視聴84.1%、音楽視聴82.8%

保護者…コミュニケーション90.4%、情報検索85.7%、ニュース80.0%

インターネットの利用時間(平日1日あたり)

小学生…93.4分 (2時間以上利用する人の割合32.5%)

中学生…138.3分 (2時間以上利用する人の割合51.7%)

高校生…207.4分 (2時間以上利用する人の割合76.7%)

保護者…132.6分 (2時間以上利用する人の割合40.8%)

青少年のインターネット(スマートフォン)利用に関する保護者の取り組み

フィルタリングを使っている…44.6%

子どものネット利用状況を把握している…34.2%

利用時間等のルールを決めている…26.6%

いずれかの方法で利用の管理をしている82.9%

 

情報端末機器の中でもスマートフォンの利用率が急増しており、この2年間で、高校生は94.8%(+4.1%)、中学生は51.7%(+9.8%)、小学生は27.0%(+9.9%)と、利用者の低年齢化が進んでいることがわかります。

これらの結果をご覧になって、どんな感想をお持ちになるでしょうか?情報端末機器の普及についてはある程度わかっているつもりでしたが、それにしても、平日にもかかわらず1日あたりのスマートフォンでのインターネット利用時間が3時間以上の人が、中学生で29.5%、高校生で46.5%にものぼるとのこと!子どもたちがネットにこれほどまでどっぷりとつかった日常生活を送っているということに驚きを禁じえません。そこまでいくと「スマホ中毒」かもしれません。しかし、これがこの国の将来を担う子どもたちの現状なのです。

ますます進む情報社会で、IT技術は日進月歩で革新されています。モノとインターネットを接続して、生活をさらに便利にしようというIoT(Internet of Things)を合言葉にモノづくりが進められています。AI(人工知能)を活用したさまざまな機器が開発され、人にとって代わることで、現在ある職業がどんどん消えていくだろうと予想されています。そんなモノの満ちあふれた世の中で、与えられたモノにただ満足して利用しているというのでは、自分でものを考える力やさまざまな能力が奪われていくのではないかと危惧さえしてしまいます。いやいや、IT機器を使いこなす力がこれからの時代を生きる力になるのだから、どんどん使えるようにならなければ!…という反論も聞こえてきそうです。でも、現代っ子たちが新しい機器を説明書も見ないで簡単に使いこなしてしまう姿を見ると、そんなことは杞憂だとわかります。

社会から求められる人材をコンピューターにたとえてみると、ソフトをたくさん搭載したものは確かに目先的には重宝がられるかもしれません。しかしながら、購入後でも必要なソフトを手に入れるのは難しいことではありません。むしろ、何も入っていないけれど高性能のコンピューターの方が、将来大々的に活躍する可能性が大きいでしょう。人間も、ツールを「使いこなす」力より「創り出す」素地を備えることの方がより重要になると思われます。そんな人材を育むことのできる環境こそが今必要なのではないでしょうか。

青少年のインターネット利用の拡大にともなって、性犯罪被害などの深刻な問題も発生していることから、内閣府では「ネットの危険からお子様を守るために、保護者ができること」という保護者向けのリーフレットをつくり、啓発活動を始めました。このリーフレットの中で「被害者にも加害者にもしないために、適切なインターネットの利用を促す」、「家庭のルールを子どもと一緒に作る」、「フィルタリングを賢く利用する」という3つのポイントを紹介しています。

けっして犯罪や事件に巻き込まれないように子どもたちを守るというのはもちろんのことです。そしてスマートフォンやタブレットを、本来費やすべきことをないがしろにして、無為に過ごしてしまう理由にしてはいけません。子どもたちの周りの大人などがスマホを楽しそうに使っていれば、自分もそうしたくなるのは当然ですから、多少なりとも大人の協力も必要かもしれません。大変便利な道具ですから、利用目的と利用時間を適切に上手く付き合うことが大切です。つい無意識のうちに伸びようとする手を止めて、ちょっと考えてみましょう。学生時代にしかできないことが、まだまだ他にもたくさんあるように思われます。

真司2017大予言講座