しだれ梅

新しいステージへ向けて

大学入試は国公立大の前期試験を終え、高校も公立入試を終え、あとは発表を待つだけという時期になりました。受験生は当然のことながら、私たちにとっても吉報を聞くまではドキドキで、なかなか落ち着けない日々です。毎年のことながら、この気分ばかりは変わりません。

進路が決まった生徒たちにとって入学までの春休みというのは、一番楽しいひと時かもしれません。かつて経験のある我々にも、その気分はよくわかります。新しい生活への不安を感じながらも、差し迫った課題など煩わしいことから解き放たれて、期待と希望に胸をふくらませて過ごすことができます。ただし勘違いしてはいけないのは、ゴールをしたわけではないということです。人生における節目であるわけですが、ゴールではありません。ここからが新しいステージの始まりです。

実は入学までに準備するべきことは少なくありません。実際に私立中学校や高校からは新入生に対して、入学するまでの宿題が与えられるケースが少なくありません。内容はこれからの学習への基盤となる学習内容の復習と新しい単元への導入です。中には浮かれ気分のまま新しい生活が始まり、いつの間にか学習面で出遅れてしまって授業についていけなくなったり、生活リズムに上手く乗れずに「五月病」になるような場合もあります。

新しく中学生になる人たちにとっては、今までの小学校という比較的せまい学区からもっと広い学区へと変わるわけですから、クラスメートなど交友関係は一気に広がります。部活動も小学校時代に比べ、本格的になります。近年公立中では、部活動に参加するかどうかが自由になっているようですが、できれば何か部活動に参加していただきたいものです。先輩・後輩といった『たて社会』の一面も経験することでしょうし、教室での勉強とはちがうものがたくさん得られるはずです。

もちろん学習面でも大きな変化があります。算数が数学に変わり、数字以外の文字を使って計算することが増えます。英語もそれまでの『話す』・『聞く』という会話中心から、『読む』・『書く』ことも加えて4技能をバランスよく習得することが求められるようになります。そして各学期には定期考査というまとめて行われるテストがあります。その成績は高校入試の際には調査書の得点として選抜材料にもなるわけですから大変重要です。

高校に送り出す生徒たちには、「高校の学習は『難しく』『進度が速く』『不親切』だよ」と話しています。特に学習内容が難解になることに、多くの生徒が戸惑います。授業で初見の内容について先生の解説を聞くというのでは、なかなか理解が追いつかず、いつのまにか板書を写すだけの作業になってしまっている…というのがありがちな姿です。それでは試験前にいざ問題を解こうとしても、ゼロからスタートしなければならないということになりかねません。中学までは復習中心の勉強で十分対応できたものが、高校ではそれだけでは通用しなくなるのです。

そこで予習の重要性が高まるわけです。あらかじめ自分なりの考えがあれば、先生の説明を自分の考えと比較しながら理解できます。アウトプットできるまで反復演習することも大切です。授業と入試勉強は別物ではありません。授業内容を押さえることを積み上げていくことで、効率よく入試につながる学力をつけられます。常に攻めの学習姿勢が不可欠だということです。

ただ、何でもかんでも全力で立ち向かうというのは困難なことです。高校では自分に必要なことを取捨選択することも大切です。ですから、そのためには卒業後の希望進路を早いうちに設定する必要があります。大学に進学するならば、まずは文系か理系か、国公立か私立か、受験の方式も一般選抜か学校推薦型選抜か総合型選抜か、などといったちがいにより、オールラウンドに学習するのか、教科をしぼって集中的に学力を高めるのか、学校の成績重視で頑張るのか、といった方針が定まってきます。むろんそれは自分一人の意思だけで決められるものではありません。家庭の経済的環境も踏まえて目標設定をする必要があります。下の表のように、選抜方法も国公私立により様々です。戦略を持って自律学習を確立することが望まれます。

選抜方式別の大学入学者の割合

(令和5年度国公私立大学入学者選抜実施状況/文部科学省資料より)

入学者 一般選抜 学校推薦型選抜 総合型選抜 その他
国立大学 97,963人 81.4% 12.2% 5.9% 0.5%
公立大学 34,946人 69.3% 26.0% 4.1% 0.6%
私立大学 491,706人 39.7% 41.4% 17.3% 1.6%

そして新しく大学生になる人たちには、自分で選んだ学部や学科であるはずですから、社会に貢献し、自立した生活者になるために、何を勉強し、何を身につけていくのかを自ら考えて行動してほしいと思います。学業が本業であることはいうまでもありませんが、その上で学生時代にしかできないことにもたくさん挑戦してもらいたいものです。アルバイトを通じて社会のさまざまなことを学ぶのもいいでしょうし、課外活動でクラブやサークルに参加するのもいいでしょう。損得勘定なしに付き合えるような友を得られるのも、学生の特権かもしれません。ただ高校までのような生活面での細かな規制はありませんので自由度は高まりますが、あらゆることが自己責任です。もちろん困ったときは、家族や周りの大人に相談すればいいわけです。でも、最終的には自分でしっかり判断していくことが基本です。

生徒の皆さんそれぞれが、新しいステージで希望を胸に充実した生活を送ってくれることを願っています。

クリサンセマム