とっとりポプラ

言語の習得

国語の授業で読解問題に取り組むとき、どうしても眠くなってしまう生徒がいます。まるで睡眠薬でも飲んだかのように、みるみる睡魔がおそってくるようです(汗)。塾での平日の授業の時間帯を考えてみると、無理もないことなのかもしれませんが…。時おり生徒に問題文などを音読してもらうことがあるのですが、そのような生徒は、なるほどと思わせる共通点が見られます。

・読めない漢字が多い。

・意味のわからない言葉が多い。

・書いてある通りに正しく読めない。

・文節・読点・息継ぎをふまえて、リズムよく読むことができない。

確かにこのような状況では、文章を読んでいてもその内容を頭の中にイメージすることができず、楽しくないでしょう。毎行のように読めない漢字や言葉に出会うのでは、いちいち立ち止まってしまって、前に進めません。このような生徒たちは、残念なことに日常生活の中で文章を読んで楽しんだり、考えたりすることは皆無に等しい状況であることが簡単に想像できます。

国語という教科についてしばしばいわれるのは、普段生活の中で読んだり、書いたり、聞いたり、話したりする言葉のしくみやルールを、あらためて確認する場であるということです。確かに子どもの頃を思い返してみると、漢字や言葉をよく知っている子というのは、おしなべて本をよく読んでいるようでした。ことさら習ったわけでもないのに、難しい言葉やさまざまなことをたくさん知っていました。

現代語だけでなく、古文や漢文などについても授業で音読することがありますが、よどみなくすらすら読める生徒は、やはり内容についてもスムーズに理解できるようです。

現代人の活字離れがいわれ始めて久しくなりますが、それはますます進行しているように思われます。インターネットやモバイル通信のなどの発達につれて、じっくりと活字を読んで考える習慣が薄れている面は否定できません。新聞の購読部数は減少の一途をたどっていますし、本屋さんの閉店も相次いでいます。

学校教育の現場でもICT教育の進展により、2024年度より、小学5年生~中学3年生の英語にデジタル教科書が導入されることになっています。デジタル教科書にはさまざまな利点があるといいます。文章にルビを振ったりマーカーを引いたり、またメモを書き込んだり、消したりもできます。英語ではネイティブスピーカーによる朗読を聞くことができますし、社会では、地図や資料などを拡大表示できます。理科では、自然の現象や実験の様子などを動画で見ることができます。教師側からすると、自分で説明するより動画を見せておく方がわかりやすかったりするわけですから、苦労が格段に減ります。ただ、教師の教務力は育ちにくくなるかもしれませんが。

生徒にとってたくさんのメリットがあり、大変便利で素晴らしいツールだと思われますが、デジタル化が進む一方で、懸念されることもあります。ギガスクール構想の一環で各自に1台ずつパソコンが与えられたことで、これまで副教材として生徒に持たせていた問題集を無くして、パソコン上のデジタル教材を利用した中学校が近隣にありました。紙の問題集の場合、生徒たちは一通り問題を解いた後も、答えの部分を隠して何度も反復することで、学力を固めることができたのですが、デジタル教材では同じようにいきません。「一度解いたから、もうできるというわけではないよ」と口を酸っぱくして言いましたが、どうも繰り返しての利用はできていないようでした。結局その学校では、保護者などの要望により今年度からは紙の問題集を復活させているようです。紙の媒体の、不便さの中に隠れている良さというのも、たくさんあるように思われます。

グミ

さて話を言語に戻しますと、英語の学習においても順調に学力を伸ばしている生徒とそうでない生徒の違いは明らかです。英語に苦戦している生徒に教科書や問題集の英文を音読してもらうと、やはり共通点があります。

・読めない英単語が多い。

・意味のわからない英単語が多い。

・書いてある通りに正しく読めない。

・抑揚をつけて、リズムよく読むことができない。

逆に英語ができる生徒はというと、すらすらと抑揚をつけてリズムよく読むことができますし、単語や文章の意味も正確にとらえることができます。

お気づきかと思いますが、国語と英語を苦手とする生徒はまるで同じような状況が見られるのです。つまり、国語にしても英語にしても、音読をしてみると語学力をある程度測ることができるといえるわけです。

福山市内の公立中学校では、英語の『ファイブ・ラウンド・システム』という教科書の学習法が、2019年度より中央中学校など5校に、2021年度からは市内すべての中学校で導入され、今年で5年目を迎えます。教科書を音声と内容理解からアプローチすることにより、「文法嫌い」ひいては「英語嫌い」をなくし、「読む」「書く」「聞く」「話す」4技能をバランスよく育むことを目的にスタートしました。この学習法の成果として感じているのは、リスニング能力と、自分の頭にあることを英語で表現する力の向上です。一方、この学習法では音声と場面の状況やストーリーを結びつけるところから始まり、個々の英単語の意味についてはこだわらないため、わからなくても平気、むしろわからないことが当たり前になっている生徒が少なくなく、語彙力の低下が心配されているのです。またマニュアル通りに学習を進めている学校では、教科書1冊の文法を2学期頃に集中して学習するために、理解が進まず混乱しがちであることも懸念されます。

そんな折、5月下旬、福山市教育委員会の担当と我々学習塾が、中学校の英語教育について意見交換をする機会を得ました。そこで「5ラウンドシステム導入後の成果の検証」、「語彙力と文法力の向上のための方策」、「音読練習の強化」など要望しました。今年の大学入学共通テストの英語で、出題された総語数は約6,000語にものぼります。限られた時間の中でスピーディーに読解を進めるためには、やはり最後は語彙力が勝負になります。

中3生の皆さんは、今月23日に開催される「英単熟語トレーニングジム500」で、受験への基盤となる語彙力をしっかりと獲得していただきたいと願っています。

立泉寺アジサイ